2016年版年報では2つの研究成果、3つの政策提言、および各研究ユニットの成果と2015年度に発表され人気を呼んだコラムを紹介しています。ここでは研究成果と政策提言の紹介記事より一部を抜粋して掲載いたします。全文は PDF (4.5MB) にてご覧いただけます。また、本号では詳細な業績や所属メンバーの一覧等を別冊のデータ編としています。こちらは PDF (1MB) よりご覧ください。

年報2016本誌目次

  • 各研究ユニットより研究成果・論文紹介
    • 次世代ジェット燃料のロードマップ発行
      航空政策研究ユニット
    • 『大震災に学ぶ社会科学 第3巻 福島原発事故と複合リスク・ガバナンス』
      複合リスク・ガバナンスと公共政策研究ユニット
    • ミャンマー水力開発における社会的バリア
      国際エネルギー分析と政策研究ユニット
    • 医療機器を介した分野横断的イノベーション:米国の新規制について
      医療機器の開発に関する政策研究ユニット
  • コラム・備忘録
    • 東アジアの金融協力の行方——チェンマイ・イニシアティブのマルチ化を巡る交渉を中心に
      篠原尚之教授
    • 2015年のリスク—「起こったこと」と「起こらなかったこと」
      岸本充生特任教授
    • オリンピックという緊急事態
      太田響子特任研究員
    • 日本と核軍縮の複雑な関係—核廃絶と核抑止の狭間で
      向和歌奈特任助教
北斎の青とセルロースナノファイバーで、被災地の水や土を除染する

研究成果

北斎の青とセルロースナノファイバーで、被災地の水や土を除染する

セシウム除去に効果があることで知られた青の顔料・プルシアンブルー。葛飾北斎の絵をヒントに、ナノ材料開発技術を 用いて除染スポンジが開発された。

2011年3月11日の東日本大震災に際し、福島第一原子力発電所の原子炉から大量の放射性物質が飛散し、土 壌や水が広範囲に汚染される事態となった。現時点においてもまだ、住民の方々の帰還、農業の復興等のために、汚染された土壌や水を除染することは、大きな社会的課題となっている。

放射性物質のうち、特に除染が必要なのはセシウムだ。セシウムは水に溶けるため、雨によって、表層から 地中 30cm ぐらいまで浸透していく。土に浸透する過程で、土中にある粘土や鉱物などのさまざまな構造の隙間にセシウムが入り込み、地下水、河川水、海へと流出する。海に流れ出た放射性物質は、プランクトン、魚など、食物連鎖全体の汚染につながり、国際問題に発展するお それもある。まずは土を除染し、セシウムが地下水、そして海へと流出することを防がなければならない。

この問題に対応するため、政策ビジョン研究センター・ナノテクノロジーイノベーション研究ユニットでは、農林水産省農林水産技術会議からの助成を受けて、2014年から、革新的技術創造促進事業「工学との連携による農林水物由来の物質を用いた高機能素材の開発」というプロジェクトを開始した。その目標の一つは、東京オリンピックが開催される 2020年までの除染に貢献する ことであり、理論的予測と実験での実証という両面からアプローチしている。プロジェクトで行っているいくつかの研究のうち、「除染スポンジ」の開発について紹介する。〔冒頭より抜粋〕

コラボヘルスで健康関連総コストを可視化

研究成果

コラボヘルスで健康関連総コストを可視化

健康経営を進めるうえで、何が企業の損失になっているのか。〈コラボヘルス〉を活かした調査の結果、他の先進国と同様に日本でも医療費以上にプレゼンティーイズム(疾患や症状を抱えながらの出勤で生産性が低下している状態)、アブセンティーイズム(病欠)による損失の方が大きいという結果が出た。

この研究の意味するところについて、健康経営研究ユニットの尾形裕也特任教授・津野陽子特任助教にインタビューを行なった。

内容

  • 組織の損失要因を評価する
  • プレゼンティーイズムによる損失
  • 〈コラボヘルス〉という取り組み
  • 改善へ向けて
学際的エネルギー・環境研究の改革の必要性

政策提言

学際的エネルギー・環境研究の改革の必要性

2016年は東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故から5年目になる。2011年3月11日に地震と津波によって引き起こされた悲劇から、この5年間、エネルギー・環境分野ではさまざまな政策がとられた。原子力安全の分野では新たに原子力規制委員会が設置され、2013年から新しい原子力規制が施行された。再生可能エネルギーの導入の強化のためには2012年7月より固定価格買取制度が施行され、最初の3年間で太陽光発電の導入量は4倍以上に増えた。福島でも除染により避難解除が解かれ住居に戻れる住民が出てきて、復興も着実に進んでいる。

しかし、こうした施策にも関わらず、非常に多くの分野で論争が絶えることがない。論点は前述した原子力規制、再生可能エネルギー政策、除染と避難以外にもさまざまであり、枚挙にいとまがない。

5年が経つ中、どうしてこうした論争がいつまでも続くのであろうか。こうしたエネルギー・環境政策は本質的に科学と社会、政治にまたがるものであり、多くの識者が、科学と政策・政治や社会との関係性、科学的助言の在り方の問題を指摘してきた。エネルギー・環境政策は、他の政策分野と同様、民主的な政治過程で決定されるべきことは言うまでもなく、科学と社会の連携が本質的に重要であることに疑いの余地はない。また過去に日本ではこの点で大きな問題があったのは確かである。

しかし、こうした指摘は、共通して重要な、根源的な問題を見過ごしている。それは日本のエネルギー・環境研究における「学際性」の弱さである。〔冒頭より抜粋〕

シンガポールの科学技術政策・大学政策から学ぶ

政策提言

シンガポールの科学技術政策・大学政策から学ぶ

2016年6月、一報のニュースが大学や科学技術業界を駆け巡った。例年のようにTimes Higher Educationの大学ランキングが公表されたのだが 、いつもと様相が異なったのだ。今までアジアにおいて1位であった東京大学が、7位に転落し、他にも複数の日本の国立大学が順位を下げた 。代わりに1位に躍り出たのはシンガポール国立大学であり、2位は同じシンガポールのナンヤン工科大学と北京大学のタイであった(以下、香港大学、清華大学と続く)。

大学ランキングについては様々な意見がある。日本の大学の実情を反映していない側面もあるだろうし、何よりもたった一回のランキングの短期的な結果に一喜一憂すべきでないだろう。ただ、一つ明らかなのは、大学も国際的なグローバル・スタンダードで評価される時代が来ているということである。日本では東京大学が「最高学府」とされるが、これはあくまでも日本の中での評価基準である。今、大学もグローバルな競争にさらされているのである。

こうした見方で見ると、シンガポールの大学の別の面が見えてくる。今やグローバル化は流行語であるが、このブームの前からアジアの大学でグローバル化への先陣を切ったのは紛れもなくシンガポールや香港などの大学である。多額の資金を用いて多くの研究者を欧米から誘致したため、NatureやScience誌でも以前から記事として取り上げられている。 シンガポールは人口が550万人 ほどで東京23区より少し大きいぐらいの、金融など一部産業に依存する小国であり、その事例は日本が完全にコピーできるわけではない。しかし、その先進的事例から学べることは極めて大きい。〔冒頭より抜粋〕

国際課題としてのグローバル・ヘルスリスクガバナンス

政策提言

国際課題としてのグローバル・ヘルスリスクガバナンス

2014年に西アフリカ諸国で生じたエボラ出血熱は、それへの対応が遅れたために、複合的な人道的・経済的・政治的危機を引き起こした。公衆衛生・保健は、感染症の蔓延、テロによる生物化学兵器等の使用、難民問題による国際的な人の移動など、他分野の政策的重要課題と関連する課題が多い。ある国のヘルスシステムや管理体制の脆弱さがほかの国にも容易に伝搬するため、国際的な枠組みでの対応が求められる。健康は、2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDG)」の目標の一つともされ国際的な政策課題としての重要性を増している。〔「はじめに」より抜粋〕

内容

  • 政策提言の策定に向けて
  • Policy Briefに掲げたG7への4つの提言
  • 今後の展開と課題—継続的な国際政策プラットフォーム機能


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Copyright © Policy Alternatives Research Institute
発行/東京大学政策ビジョン研究センター(センター長:坂田一郎)
編集/佐藤多歌子
デザイン・DTP/東辻賢治郎
2017年3月発行