政策提言 国立大学法人法施行から10年

大学改革とイノベーションへの貢献

東京大学政策ビジョン研究センター 大学と社会に関する研究ユニット 渡部俊也教授

2013/12/16

この政策提言は2013年10月12日に開催した、シンポジウム「国立大学法人法施行から10年 大学改革とイノベーションへの貢献」の成果として取りまとめたものです。詳細は下記をご覧ください。
開催報告 シンポジウム 国立大学法人法施行から10年

AFP=時事

2004年の日本の国立大学法人化は、「産業構造の変革期に起きた予期せず生じた法人化」であった。このため2004年当時においては長期的展望に基づく設計が欠けていた。このような問題点は、未だに十分認識されておらず、そのため必要な課題に十分取り組むことなく10年を経過しつつある。大学と社会との関係を最適化するためにも、今こそ長期的展望に基づく国立大学法人の設計と、国立大学法人の10年計画が必要である。この10年計画の実行の過程で、大学のマネジメントとガバナンス体制の確立を目指していくべきである。

その実行の効果をあげるためには、これらと並行して大学経営人材、産学連携人材、研究支援人材などの育成が行われることが急務である。これらの人材が育成されることにより、多様で独立した起業家的大学像の確立につながる。

また、この10年計画における国立大学法人は、産学連携政策を含む現在の大学に関係する多様な政策の統合主体として役割を果たすべきである。大学の独立したマネジメントによって科学技術政策や産学連携政策等、大学が関わる多様な政策の統合をも実現することが期待される。政府も政策立案と実装に際して、このような大学の役割と機能にもっと注目するべきである。

このような大学がイノベーションに果たす役割として期待されるのは「産業界の人材ハブとしての機能」、「大学の独自性の発露であるベンチャーを介した産業との連携」によるイノベーション創出である。これらを着実に進めるためには、大学と社会との関係構造の見える化と、成果のフィードバックの仕組みが必要である。 既に大学と社会の関係も1対1の関係の関係ではなく、社会のネットワークに埋め込まれた大学という構図でみることが適切であり、そこには国内にとどまらないグローバルなエコシステムが形成されている。このような拡がりを持ったエコシステムの育成を促す効果的なモデルの構築と実装に関する施策が必要である。

今まさに起きつつあるプラチナ社会やサイエンス経済などへ激変する社会構造の変革期において、大学が期待される役割は、単に技術開発に貢献する産学連携ではなく、社会システムの設計を見据えた、バックキャストの研究開発や規制改革などの分野における大学と社会との連携分野の拡大をも含む。大学にとってこのような役割の実現はそれほど簡単なことではないが、ディシプリンの異なる多様な参加者からなる議論の中での政策立案と実装を可能ならしめるため、大学のリソースを結集し国内外にネットワークを広げて、その役割の実現に近づいていくことが求められている。

今回の「独立性が求められる大学」が自ら社会との関係性のあり方を提案する試みは、さらに具体的な10年計画の姿を明らかにしていくために、2014年4月に法人化10周年を迎えるまでの活動に引き継がれる。