デザイン法研究会

2012/8/22

Photo by AP/AFLO

設立趣旨

わが国には『デザイン法』という名称の実定法は存在しない。「デザイン」という用語自体は、かつて「輸出品デザイン法」(昭和34年法律第106号)において定義規定が存在していたが同法が1997年に廃止されて以来、法令用語として用いられる事例はあるものの、実定法上の定義規定は存在しなくなっている。

他方で、「デザイン」という用語そのものは馴染みのあるものとして世間に定着しており、いわゆる工業製品に留まらず、インテリア、建築物、店舗、衣服等の様々な分野において頻出かつ不可欠な言葉の一つとして用いられており、最近ではパソコンやスマートフォンの画面上のアイコンなどデジタルの世界においても「デザイン」が重要となってきている。このような日常用語における「デザイン」は、実定法上は意匠法、著作権法のほか、不正競争防止法、商標法などの知的財産関連諸法によって直接または間接的に保護されているのが現状である。

そのような中、従来の一般論としては、意匠法が工業(産業)分野のデザインを保護し、著作権法は文化の範囲のデザインを保護するものと区別され、概ね棲み分けられていると考えられてきた。

しかしながら、例えば、米国では著作物性が認められていた人形のデザインにわが国では著作物性が認められなかったファービー人形事件やWebデザインに著作物性を認めたサイボウズ事件のように、産業と文化の区別は必ずしも明確なものではなく、両法の境界線上のデザイン自体も増加してきており、ビジネスの場面でも混乱が見られるようになってきている(最近では携帯電話の釣りゲームの操作画面に著作物性を認めて侵害を肯定した地裁判決が知財高裁で逆転敗訴となる事件もあった)。これは、従来、文化の範囲のものと考えられてきたものが産業あるいはビジネスとして用いられる場面(例えばキャラクタービジネス)が増えたり、逆に、従来、産業あるいはビジネスの一つとされてきたものの中にも文化の範囲のものと捉えうるもの(例えばグラフィックデザイン)が増加してきたために両者が截然と区別できなくなりつつあることに起因する可能性が高い(仮説として「文化と産業の接近・融合あるいは相対化の原理」としておく)。

また、関連諸法としては不正競争防止法によって一定範囲で周知・著名のデザインや商品形態が保護され、商標法でも立体商標が保護されている。無論それぞれの法目的に基づいて一定の範囲でデザインを保護するものであるとしても、そのような視点はあくまでも法律の側から見た視点であって、デザインを創造・活用する一般人から見た場合には、それぞれの法の使い分け等について必ずしも明瞭なものとはなっていない。

アップル社のように技術力というよりはむしろデザイン力を最大限に活用したビジネス戦略は今後ますます重要になると考えられるが、わが国では意匠の出願件数を見ればむしろ減少傾向にある。この事実は、少なくともわが国の過去のデザイン関連政策が功を奏していない事実を示しているものとも考えられる。

そこで、本研究会では、デザインに関する意匠法と著作権法等の研究の単純な総和に留まらず、関連諸法を統合した「デザイン法」という独立の法領域といいうるだけの共通原理の発見あるいは体系化について志向することを目的とする。このような共通原理の追究又は体系化は、「消費者法」研究で著名な大村敦志教授が指摘された通り、「周期律表によって未発見の原子が予想されたように、体系思考は欠けている部分をわれわれに指し示す」等の様々なメリットの享受につながる可能性を秘めている。

具体的な研究内容としては、諸外国のデザイン保護制度・政策の調査・分析を踏まえて、わが国において「デザイン」はどう保護されるべきか、という一般人側の視点から、既存の判例・学説等について見直しを行うとともに、新たなデザイン保護体系(例えば、「デザイン法」(仮称)の創設)の提言を含めたデザイン政策全般について再検討をしていきたい。

目的

わが国において「デザイン」はどう保護されるべきか、という視点から、既存のデザインに関する判例・学説等について見直しを行うとともに、新たなデザイン保護体系(例えば、「デザイン法」(仮称)の創設)の提言を含めたわが国のデザイン政策にとって有効なオプションを創出することを目的とする。

活動内容

Ⅰメーリングリストを作成し、デザインと法に関する話題を随時議論する。
Ⅱ Ⅰで話題になり、具体的な検討が必要になったテーマに付いて研究会を開催する。
Ⅲ Ⅱの成果のうち公表すべきものはホームページ等を通じて随時発表する。

現在の研究テーマ

ファッションの法的保護

開催報告

デザイン法研究会 第1回から第6回 まとめ

組織

東京大学政策ビジョン研究センター 知的財産権とイノベーション研究ユニット内に置く。

4.メンバー(2016年4月7日現在)

中山信弘(東京大学名誉教授)
土肥一史(日本大学教授・一橋大学名誉教授)
久慈直登(日本知的財産協会専務理事)
市村直也(弁護士・橋元綜合法律事務所)
青木博通(弁理士・ユアサハラ法律特許事務所 パートナー)
金子敏哉(明治大学法学部准教授)
青木大也(大阪大学大学院法学研究科准教授)
露木美幸(帝京大学法学部法律学科准教授)
金井倫之(弁理士・ニューヨーク州弁護士・松原村木国際特許事務所)
野崎雅人(弁護士・アンダーソン・毛利・友常 法律事務所)
池村聡(弁護士・森・濱田松本法律事務所)
中川隆太郎(弁護士・骨董通り法律事務所)
山本真祐子(弁護士・内田・鮫島法律事務所)
吉岡(小林)徹(一橋大学イノベーション研究センター特任講師)
澤田悠紀(明治大学知的財産法政策研究所 客員研究員)
渕麻衣子(明治大学知的財産法政策研究所 客員研究員)
幹事 杉光一成(金沢工業大学教授・東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員)